マル得温泉旅行

~知床からトカラ・台湾まで~

【野生の旅】鹿児島Go! Go! South Islands.

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【野生の旅】 ■鹿児島 Go! Go! South Islands.

◎鹿児島 口永良部島

 屋久島で借りたMTBの調子が悪い。見た目からしてボロボロなので最初か不安だったのだが、私の操作に問題があるせいかギアの変更が思うようにならない。これって坂道だらけの場所、例えばこの口永良部島などでは致命的としか言いようがない。下り坂や平地でギアを重くして自転車を快走させるのは、とても気持ちよいものだが、上り坂でギアを戻すことができなくなったら…と考えると二の足を踏んでしまう。
 そう言う訳で口永良部島滞在中は、最も軽いギアのまま自転車を漕ぎ続けたのである。(しくしく)

 この島は、想像以上に坂道が多く、しかも急だ。重たい荷物は自転車の荷台に縛り付けているのでその点では問題ないが、あまりのアップダウンの激しさに泣きそうになる。
 ヒイヒイ言いながら上り坂を漕いでいる時、後ろの荷台に異変を感じた。振り返ると、縛り直したばかりの荷物が落ちそうになっている。やれやれ。先程から何度もヒモが緩んでいるのだ。小休憩を兼ねて自転車から下りた後、水を飲みながら荷台の様子を確認する。
 何となく荷台が左に傾いているような気がした(ん?)。注意深く見ると、荷台の支柱を固定するネジがない…(絶句)。どおりで荷物が落ちそうになる訳だ(納得)。口永良部島に自転車屋さんがないことは知っていたので、さほどの動揺はなかったが、精神的に物凄く疲れた(ハー)。
 仕方ないから応急処置を施す。少し考えた後、手持ちの直径3cmのリングをネジ穴に差し込み、ヒモでグルグル巻にして荷台の支柱を固定する。多少の時間ロスはあったが、荷台が安定する(満足)。

 島では牛が放牧されている。柵で仕切られているので路上にはいないが、道路のすぐ脇でモーモー鳴いている。(なぜか道路上を歩いている牛と一回だけ遭遇したけど…)。牛たちの数が多いこともあり、必死になってペダルを踏んでいる私が見せ物になっているようで、ややみじめな気分になる(ぐすん)。
 4月だが、さすがに南国。日射しがきついし、自転車を漕いでると、とても暑い。こまめに水を飲み、栄養補給をくり返す。まだ旅は始まったばかり。こんなところでバテるわけにはいかない。

温泉画像

 寝待温泉へ向かう物凄く急な坂を下る。帰りの上り坂を考えたくないくらいの傾斜。暴力的としか言いようがない下りだ。身の危険を感じながら、壊れるくらいに思いっきりブレーキレバーを握りしめる。(本当に壊れそうだったので途中からは自転車を下りて歩いた)
 海岸に到着(ホッ)。時計を見ると16時30分。干潮から1時間経過した頃だ。何はさておき海中温泉の探索を開始する。口永良部島で最も楽しみにしていたスポットなのだ。

 目の前には立神という奇岩がある。(あまりにも巨大すぎるので、もはや岩とは呼べないかも知れないけど)。その根元付近の岩礁をうろうろと探す。その途中、ニョロニョロしてる海蛇を見つけてしまい、やや腰が引ける。(でも温泉探索をやめない)。
 ほどなくしてぬるい溜まりを発見。その近くでは51℃の湯が勢いよく湧いていた(歓喜)。口に含むと玉子味がする。塩気は感じなかったので、どうやら海水と混じっていないピュアな源泉らしい。
 速攻で服を脱ぎ、湯につかる。うーん、気持ちよい。泣きそうになりながら自転車を漕いだかいがあるというものだ。でも、やや不満。源泉温度が高いので海水と混じるところに入ったのだが、時々撹拌しなければならない上に、黒くて丸くて小さい虫?の群れと闘い続けなければならなかった…(涙)。

 ほどほどに満足し、服を着る。最後にもう一度だけ味を確認しようと源泉湧出地点に手をつけてみると、なんと先程より温度が下がってる。塩気も感知するし、どうやら潮が満ち始めたみたいだ。温度計を入れると44℃。熱めだがかなりの適温になっていた。(キャー!)
 迷うことなく、もう一度裸になり海中温泉に入り直す。底から気泡がブクブクと立ち上る(=天然ジャクジー)中、岩礁の間に寝そべって入湯するのは、極楽以外の何ものでもない(断定)。薄気味悪い虫もいないし、先程までのややブルーな気分などあっという間に消えていた。
 湯は44℃からみるみるうちに39℃まで下がり、浴槽?も次第に深くなっていく。このまま死んでも良いと思えるくらいの快適さ。自然の営みの絶妙さに感謝しながら、濃密な時間を満喫した。(いやーあ、南の島に来て本当に良かった)

温泉画像

 ところで口永良部島を代表する温泉として、寝待温泉が真っ先に挙げられる。全国的にも有名な温泉で、その効能を目当てに島外からも湯治客が押し寄せてくる。温泉に隣接して自炊専用の湯治小屋が立ち並び、昔ほどの賑わいはないが現在に至るまで多くの湯治客を癒し続ける。

 急坂を下りきった場所には車が数台とまっていた。自転車を隅の方に置き、温泉へと向かう。すぐ左手には海岸があり、ゴツゴツとした岩場がかなり遠くまで広がっている。
 いくつかの湯治小屋の間を抜けて寝待温泉へと向かう。このアプローチが、実に美しい。小道の両脇には、平屋建ての湯治小屋が立ち並び、南方の植物が彩りを添える。絶妙の調和加減に思わずタメ息が漏れる。(ハー)

 湯治小屋を抜ける頃、寝待温泉の湯小屋が見えてくる。コンクリ製建物で、いかにも頑丈そうな造り。混浴なのだが幸いなことに、同年代の男性しかいない。気を使うことなく入湯する。
 湯は青白濁に濁り、そして熱く強い。すぐに疲労困憊してしまい、湯あたり気味になる。出たり入ったりを繰り返すが、疲労は激しくなる一方。名残り惜しくはあるが、次の目的地へと移動する。

 寝待温泉から湯向(ゆもぎ)温泉に向かう。だが道の選択を間違えたせいでかなり遠回りしてしまう。(シクシク)。自転車で移動しているためか、そのことに気付いた瞬間、激しいショックを受けた。(ガーン)
 夕暮れの中、湯向温泉に到着。休憩を兼ねて温泉を堪能する。入湯後、外に出ると辺りはすっかり暗くなっていた。時計を見ると20時20分。さて、西ノ湯温泉までの10km前後、頑張ってペダルを漕ぎましょうか。

温泉画像

 湯向集落を抜けるとすぐに人工の明かりがなくなった。島の周回道路なのだが街灯は見当たらない。木々で覆われた中、自転車を走らせる。頭上を見あげると月が出ている。きれいな三日月だ。試しにライトを消して、月明かりを頼りに自転車を走らせてみる。
 最初は薄ぼんやりとしか見えず、ソロソロと走っていたが、目が暗さに慣れるにつれ、怖さがなくなってきた。月が隠れるくらいに木々が生い茂っている箇所ではライトをつけざるをえなかったが、たいていは問題なし。月夜の中、無灯火で疾走する。

 時間と共に五感は妙に研ぎ澄まされていく。闇に潜む獣の息遣いや、路面のデコボコなどが、痛いくらいにダイレクトに伝わってくる。最初は周囲に対する警戒感しか感じられないが、ある段階を超えるとそれは周囲との一体感へと変容する。
 確かに闇は怖い。だが月夜は闇ではない。わずかな明かりの下、獣たちは自在に動き回る。古来人類も使いこなしていたに違いない。
 車とすれ違うこともなく街灯が皆無に近い。この島を訪れた私は、月明かりの下で動くことをようやく思い出したのだ。

 しばらくすると月が隠れてしまった。さすがに星明かりだけで自転車を走らせることは難しいので、ライトをつける。だが時々ライトを消して走ることもある。いくらかの危険をかえりみずに。
 なぜかと言えば、ただ単に星が見たかったからだ。満天に散らばる星を一度でも見てしまったからには、致し方ないことだと思う。

 夜10時。満潮を1時間ほど過ぎた絶好の時間帯に西ノ湯に到着。集落外にある無人の湯小屋だが、街灯で照らされているので全く迷わずに辿り着くことができた。教えて下さった島民の方には感謝の限りだ。
 この温泉は満潮前後でないと湯が溜まらない構造になっている。なぜそうなるのかについては、よく分からないとしか言いようがない。どうしても知りたい人は文献をあたるなり、識者に尋ねるなりしてほしい。少なくとも私は関心が薄い。なぜかと言えば、そんなことどうだって良かったからだ。ヘロヘロに疲れきっていた私にとっては、他にすべきことが山ほどあったのだ。

温泉画像

 湯小屋には誰もいなかった。外は街灯で照らされているが、半開放構造の湯小屋内部に電灯は見当たらない。探すのを即座に諦め、用意していたロウソクを取り出す。皿の上に置き、光を点す。ボンヤリとした明かりが湯小屋内部をやさしく覆う。
 しばらく呆然とロウソクの明かりを見つめる。目を離すことも、身動きすることも出来ない。後になって思うと一日中自転車を走らせて疲れきっているのだから、まずは目の前にある温泉につかれば良いと思うのだが、この夜の私にそのような理性的な判断はできなかった。(やれやれ)

 ロウソクの呪文が解けた後に温泉につかる。胸元まで湯が溜っており、十分深く満足。湯の中で全身の筋肉を揉みほぐす。ゆっくりと疲れが溶けていくようだ。ロウソクを全く眺めようとせずに、ひたすら十本の指を動かし続ける。
 十分に暖まった後、裸のまま湯小屋の外へ出る。すぐそこは海。ただし崖の上にあるので落っこちたら、おそらく助からない。街灯の明かりが気になるがやはり星は綺麗だ。せっかくだからと、ここで遅めの夕食にする。夜空を見上げながらオニギリをパクつく。

 その後、他に誰も来る気配がなかったので、湯小屋の中二階脱衣所で寝た。(ゴメンナサイ)

-2001.04.27-  

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