マル得温泉旅行

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【野生の湯】秋田 皆瀬村 栩湯(とちゆ) 湯跡 [東北野湯]

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【野生の湯】 ■秋田 皆瀬村 栩湯(とちゆ) 湯跡 →[東北野湯]

→■赤湯又沢右俣右沢より続く

 正午過ぎ、M氏と共に赤湯又沢から戻った後、取り合えずご飯を食べることにする。空腹に加え、久しぶりのマトモな食事ということもあり、親子丼と稲庭うどんを注文。とても美味しかった。(満足)
 M氏と別れた後、再び温泉探索を開始する。次に目指すのは栩湯(とちゆ)。最近になって、入湯したという話を、ほとんど聞かない温泉だ。データが不足しているので、とにかく現地に行くしかない。

 1/25,000地図に記載された道を入っていく。想像以上に立派で、かつ、新しい道路だった。かなり奥まで車で乗り入れることができた。突き当たりは、現在進行形の工事現場。車を降り、休憩中の作業員から情報収集をしたが、どうも話が噛み合わない。栩湯という温泉など聞いたことがないと言うのだ。まあ、山奥にある廃業した温泉なんて、知っている方がどうかしてるのかもしれないのだが。(笑)
 取り合えず、この先に道は続いていないことを確認する。礼を言い、車へと戻る。さて困った。探索の困難さは覚悟していたが、まさか出発点で躓いてしまうとは...。

 こういう場合は、基本に戻るに限る。地図を広げ、真剣に読み始める。しだいに地図と周囲の地形とが、自分の中で一致し始める。ある程度の確信を得た後、車を後戻りさせ、山側に鋭角に入り込むような分岐を探す。来る途中、見かけた記憶があったのだ。
 ほどなく登山道の入口らしき分岐に到達する。ただし看板や標識といったものは一切ない。頼りになるのは、野生の勘のみ(笑)。車の時計を見ると、午後1時前。「取り合えず、しばらく歩いてみよう」と、軽い気持ちで出発する。

 登山道や遊歩道と言うより、雰囲気的には林道に近い。ただ鋪装されていないので、気持ちよく歩くことができた。ここ数日、かなり歩いているわりには元気だ。まあ、赤湯又沢赤湯又沢右俣右沢に比べたら、しっかりした道がある分、歩きやすいから、当然と言えるかもしれないが。
 そうこうするうちに、案内板が設置された分岐に到達した。そこには、しっかり「栩湯」への行き方も書いてある。ここまでは間違えもなく、ほぼパーフェクトだ。「楽勝!」と思わず叫んでしまったが、実は大間違え。ここからが悲惨だった。

 案内板に従い進んで行くと、そのうち踏み跡が怪しくなり、ついには消滅した。(ゲゲっ)。地図を読む限りでは、ここら辺に栩湯があるはずだが気配を感じない。仕方がないので、崖をよじ登ったり滑り落ちたりしながら、無理矢理に前進する。が、踏み跡の続きは一向に見つからない。(シクシク)
 その後も、道なき道をひたすら進むが、相変わらず湯の気配を感じない。恐ろしく体力を消耗する。しばらく探索した後、前進を諦め、断腸の思いで、引き返すことにする。だが、来た経路を引き返すのは、あまりにも危険なことに気付く。と言う訳で、来た道とは異なるルートを、適当に戻ることにした(<バカ)。

 ところが、かなり打ひしがれて戻る途中、前方に噴煙を発見!一気に気力体力回復。薮を掻き分け、夢中になって近付く。「おおっ。源泉地帯だ」と思った瞬間、悲劇は起こった。

(ズボっ)<ボッケにはまる音(^^;

「ウギャー!!!!」<一瞬遅れて絶叫

 ▼栩湯の源泉地帯。写真向かって右側の崖下へと湯は流れ落ちる
温泉画像

 急いでボッケ(激熱の地面)から右足を引き抜き、田植足袋を脱ぐ。右足首は赤く腫れ、早くも数カ所の水膨れができていた。ヒリヒリ痛む。嬉しさのあまり、目の前の情景に気を取られ、足元に対する警戒心が全く働かなかったのだ。応急処置をしようにも、沢など見当たらない。うかつに動くこともできず、しばし呆然とたたずむ。

 おそらく意識が少しの間、飛んでいたのだろう。しばらくしてからノロノロと動き始める。が、赤く腫れた右足に、田植足袋を履く気にもならず、裸足で移動する。源泉地帯を慎重に進むが、メチャ怖かった。

 湯は崖下に流れ落ちている。「下の方なら湯も冷えるだろうから、そこで応急手当もできるだろう」と、取り合えず降りることにする。降り立ったそこには、某Webサイトで見た露天風呂の跡があった。(わーい)

 ▼源泉地帯の崖下には、落ち葉で埋まった湯舟跡があった
温泉画像

 湯舟跡には、落ち葉が多量に堆積していたが、崖上の源泉地帯からの溢れ湯がうまい具合に溜まっていた。温度を確かめると、これが見事に適温。取り合えず、落ち葉を掻き分け、火傷した右足首を露天跡に突っ込む(<湯治のつもり)。ピリピリしみるが、そんなことは言ってられない。
 一応弁解しておくが、あの時、私はパニック状態に陥っていた。沢が近くにないと言っても、5分も歩けば見つかることぐらい分かっていた。にもかかわらず、頭の中には「火傷→沢がすぐ近くにない→温泉で湯治」という図式しかなかったのだ。

 右足首を温泉に突っ込みながら、露天跡を掘る(<根性あるのみ)。地表は柔らかく、とても掘りやすかったのだが、適当なところで切り上げ、入湯する。とにかく体を休めたかった。100℃弱→41℃。pH5弱酸性。無味無色硫黄臭。
 入湯するまで大変な苦労をしたこともあり、とても気持ちよかった。でも、かなりブルーな気分。大きな代償だったが、幸いなことに、足の裏までは火傷していない。気合いで田植足袋を履き、帰り道を急ぐ。
 車に辿り着いたのは、想像以上に早く、午後4時過ぎだった。田植足袋を脱ぐと、水膨れが破裂しており、内側の肉が毒々しく露出していた。某旧噴火口を探索した時も同じように火傷したが、ここまで酷くはなかった。あの時は運が良かったのであろう。

 ▼とても掘りやすかったが...。泣きながら手堀したのも今となっては良い思い出(嘘)
温泉画像

 この後、一気に疲れが出たようで、小一時間ほど仮眠する。その起き抜けに、何となく汚水混じりの某川湯に入湯する(<大バカ)。「非衛生的すぎて火傷にはマズかったよな」と思ったので、湯治(=荒治療)を目的に川原毛大湯滝へと向かうことにする(<超バカ)。
 午後7時過ぎ、真っ暗な中をライトで照らしながら、右足を引きずりつつ湯滝を目指し遊歩道を歩く。予想通り、他に誰もいなく、大湯滝を一人占めする。(万歳三唱)。

 意を決して入湯する。さすがは日本有数の強酸性泉。傷口がゲロゲロしみる。痛みを紛らわそうと、ビールを飲むが全く効かない(笑)。これならどうだと、血管が切れそうになるくらい大声で歌い始めるが、これまた効き目なし(爆)。でも、他にすることもないので、サザンやユーミンを熱唱し続ける(<自棄くそ)。
 大湯滝の飛沫と轟音に包まれながら、そうやって1時間以上過ごした。おかげで、傷口がドス黒く凝固し、旅続行のメドがつく(<おいおい)。

 翌朝5時12分に目覚める。体中の筋肉がバリバリ痛い。右足首を見ると、火傷痕がケロイド状に陥没してた。(号泣)。と、泣いてても仕方ないので、田植足袋を履いて野湯探索を開始する。うーん、懲りない人間ですね。(笑)

-2001.10.08-  

→■硫黄取りの湯へ続く

【コースタイム】
 登山口出発1256-栩湯?-登山口帰着1611

東北野湯
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