マル得温泉旅行

~知床からトカラ・台湾まで~

【野生の湯】桃園縣 復興郷 四陵温泉 温泉瀑布 [台湾野渓温泉]

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【野生の湯】 ■桃園縣 復興郷 四陵温泉 温泉瀑布 →[台湾野渓温泉]

→■梵梵温泉より続く

 台湾のバス、特に地方の長距離バスは、かなりワイルドだ。運転が荒い上に、運転手は好きな音楽を大音量で流している。台湾ポップスをバックに、自然の中を疾走するのだが、これがとても気持ち良い。特に英士橋から四陵までのバスの旅は、天候も良く、景色も申し分なく、音楽の選曲も悪くないしと、パーフェクトに近かった。
 この運転手、運転が異様にうまい。ところどころ陥没した曲がりくねった山道を、クラクションを鳴らしながらビュンビュン飛ばす。これはスレ違えないよな、という場所でも、対向車の運転手に大声で指示を出し、軽々とすり抜けていく。ハッキリ言って、格好良かった。(笑)

 ▼山道の途中で小休憩中のバス。燃料補給をしています。
温泉画像

 何度か新聞入りの筒を点在する民家に投げ入れた後、中間地点?の山小屋らしきところで小休憩する。その時、私にどこに行くのか?と聞いてきたみたいだったので、ガイドブックを取り出し、四陵温泉に行きたい旨を伝える。さらに四陵バス停ではなく、四陵温泉への入口で降ろしてほしいと、身ぶり手ぶりで訴える。人間誰しも楽をしたい。
 運転手がニヤリと笑った。どうやら通じたみたいだ。これで1km歩く距離が減ったという訳だ。まあ、油断は禁物だが。(笑)

 四陵温泉が近付いてきた。なかば習性となってしまったが、自分の存在を運転手にアピールするために前方に移動する。運転手は心配するなと言うように私に笑いかける。曲がりくねった山道の途中、後ろに車がついてるにもかかわらず、ズバリ四陵温泉の入口で停車してくれた。「ここから行くんだぞ」と丁寧に教えてくれる。ありがとう。両手を合わせて「謝謝!」と叫び、バスを降りる。うーん、台湾のバスの運転手は親切だ。

 重たい荷物を担いだまま山道を歩く気にならないので、必要なものだけザックに移し、残りの荷物を茂みの中に隠す。台湾に来てもこんなことをやってよいのだろうか。(笑)。田植足袋に履き替え、谷底を目がけて歩き始める。
 渓谷へ向かい山道を一直線に下っていくアプローチからしてワクワクさせる。かなり傾斜が急なので危険なポイントには補助ロープが備え付けられている。温泉までは一本道(と言っても分岐は何ケ所かある)だし、目印のヒモがポイントごとにあるので道に迷う心配はない。下り坂なので飛ばす。
 途中、20人程度の集団を追い越す。各人が鍋釜や食材など大荷物を持っており、とても危なっかしい。かなり道が悪いので、ちょいとピクニック気分という感覚ではマズいのではないかと思うが、おそらく台湾ではこういうのが当たり前なのだろう。(国民性の違いということにしておく)

 ▼四陵温泉を対岸から眺める。見事な湯滝。
温泉画像

 歩き始めて30分を過ぎた頃、水の音が聞こえ始め、やがて渓流に出会う。対岸には何人かの水着の人間が見える。どうやら温泉に着いたらしい。
 温泉の全貌が明らかになる。対岸の崖上からは湯気と共に温泉が流れ落ち、湯滝と化している。湯量は川原毛大湯滝カムイワッカ湯の滝には及ばないが、立山新湯や北海道にあるオンネトー湯の滝と同等かあるいはそれ以上という規模だ。

 「素晴らしい」。思わず呟いてしまった。

 ところで、対岸に渡るには崖を降りて渡渉するしかないと思っていたが、なんと渓谷間にワイヤーが張られており、台湾版の野猿(=人力ロープウェイ)が設置されていた。日本では奈良の十津川地方にあるらしいが、残念ながら利用したことはない。他人が渡る様子を観察した後、面白そうなのでチャレンジすることにした。

 ▼台湾版の野猿で渓流を飛び越える。対岸では湯滝が流れ落ちる。実にワイルド。
温泉画像

 対岸でブラブラ揺れている荷台をロープで手繰り寄せ、よっこらせとそこに跨がる。ザックをしっかり背負っていることを確認してから、ゆっくりと進み始める。ところが手繰り寄せたロープを手放さなかったのがマズかったらしい。ロープが右手に絡まり、思いっきり青あざをつくってしまった。(涙)。周囲の台湾人が「オー!」と、どよめく。何ともないようなふりをしていたが、これがメチャ痛かった。(シクシク)。やはり仕組みが今一つ分からないものには、安易に手を出してはいけません。

 適温の小振りな露天が何ケ所か作られていた。水着に着替え、香り高き硫黄臭に包まれながら、ツルツルする湯を堪能する。源泉温度は高そうだが、流れ落ちてきた地点では熱め適温になるので加水調整をする必要がない。間近に迫る渓流と湯滝を交互に眺めながら至福の時間を過ごす。また、お約束なので湯滝にも打たれるが、どうも落ち着かない。個人的には湯滝を眺める方が好きだ。

 ▼温泉瀑布に打たれる台湾人。手前に野猿が見えていますね。
温泉画像

 昼食に揚げパンを食べる。不味くはないし、カロリー補給にピッタリの行動食なのだが、あんなに食べづらいものとは思わなかった。豆乳とセットで購入しなかったことを深く後悔する。

 小一時間ほど滞在した後、帰り支度を始める。もう少しノンビリしたい気もしたが、今後の日程の考えるとそうも言ってられない。渡渉するのが嫌だったので、再び野猿を使うことにする。ただし今度は上り方向なので、楽はできない。ロープを必死になって手繰り寄せ、テコの原理で少しずつ前進する。やはり重力に逆らうのは大変だ。
 野猿から降りた直後、休むことなくゼイゼイと息を切らしながら山道を登り始める。我ながらタフだと思うが、あまりの急傾斜に途中でダウン。しばらく休憩を取らざるをえなかった。ペースを上げずにゆっくりと歩く。こんなに帰り道が辛いのも珍しい。寝待温泉大深見張りの湯に匹敵するぐらい体力を消耗する。

 息絶え絶えの中、ようやく出発地点に辿り着く。さすがに高低差100m以上あるので疲れた。やや心配していたが、置き去りにしていた荷物も無事だった。水を飲み、一息つく。時計を見ると12時40分。予定よりもかなり早い。
 さて、これからが大変だ。16時30分発の最終バスを目指し、10km以上歩かなければならない。気を引き締めて、最初の一歩を踏み出した。

-2001.12.30-  

→■台湾横断バス旅行が無事終了へ続く

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