マル得温泉旅行

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【野生の湯】秋田 皆瀬村 赤湯又沢右俣右沢 [東北野湯]

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【野生の湯】 ■秋田 皆瀬村 赤湯又沢右俣右沢 →[東北野湯]

→■赤湯又沢より続く

 赤湯又沢の露天で、しばらく入湯した後、ベースキャンプの作成作業に取りかかり、昼食が終わる頃には、11時30分になっていた。
 さて、これからが温泉探索の本番。さらに上流の、赤湯又沢右俣右沢で湧出するという温泉を目指す。複数の証言から判断するに、どうやら、この沢全体が温いらしい。ただ、沢屋さんの遡行ルートから外れるということもあり、温泉湧出についての決定的な証言は見当たらない。

 荷物を軽くしての出発。足取りも軽い。すぐ上に別の露天があったが、帰りに入ることにして、取り合えず見送る。少し先の左岸(向かって右側)から、噴気が上がっているのが見える。近寄ってみると、沢より一段高いところに、開けた台地があった。湯の湧出も見られ、一帯は地熱のために暖かい。焚き火の跡もあるし、どうやらテン場の適地らしい。だが、有毒ガスの近くで、寝たくはないと思った。少し手を加えれば、ここでも手堀露天を作れるのだが、二人とも、そんな気持ちは全くない。先を急ぐ。
 少し傾斜がきつくなってきた。小さな滝を何個も越えていく。いずれも安全な巻き道があるので、難しくはない。ほどなく、かなり大きな滝と共に、赤湯又沢左俣右俣の岐れが目の前に現れる。右俣にかかる滝は、右岸(向かって左側)に倒木を利用した絶好の巻道があったので、余裕をもって越すことができた。
 まぎらわしい分岐?を過ぎた頃、あちこちで少量の温泉湧出を確認する。掘れば、それなりに入湯できそうだったが、取り合えずパスする。手堀するのはこの上流で温泉が湧いていなかった時だけだろう。

 ▼写真中央のV字切り込みが、赤湯又沢右俣右沢に流れ込む熱湯沢。
温泉画像

 そして、赤湯又沢右俣右沢出合が見えてくる。見たところ、右手から入り込む沢に温泉湧出の気配は感じられない。その沢に、M氏が足を踏み入れた。瞬間、満面の笑みを浮かべる。私も、すぐ後に続く。お互い、顔を見合わせて大笑いする。ひえー、暖かい!!(万歳三唱)
「おおおっ。沢全体が、ぬるいですね。まさしく、カムイワッカ状態」。
 笑いが止まらなくなった二人。壊れかけていたに違いない(笑)。ここからは、とても楽しい沢登り。バカみたいにニヤニヤしながら、赤湯又沢右俣右沢を登り始める。こうなったら、疲れなど全く感じない。体の奥底から力が沸き上がり、歩くスピードも早くなる。
 先に進むにつれ、沢の温度も上昇する。この季節、入湯するのには、かなり低い温度だが、気持ち良さそうなポイントが次々と現れる。入湯の欲望を抑え込み、温泉湧出箇所を目指す。すぐそこまで来ているはずだ。

 ▼とても目立っていた岩造りの天然湯釜。自然の造形美を感じた
温泉画像

 いきなり視界が開け始めた。周囲の木々が、徐々に遠ざかっていく。ついに到着したらしい。やはり赤湯又沢右俣右沢には、源泉地帯があったのだ。
 広大な河原には、草木の姿が見当たらない。あちこちで噴煙がモクモクと沸き立つ。目の前には、殺伐とした地獄が広がっていた。予想を超えた光景を前に、歓喜の絶叫を上げる。先ほどの赤湯又沢とは、スケールが違い過ぎる。
 筋金入りの地獄フェチの私には、熱く血が騒ぐのを止めることはできない。本能のおもむくまま、探索を開始する。まずは、左岸(向かって右側)。最も目立つ岩造りの天然湯釜へと近付く。岩の隙間から熱湯が激しく湧出しているだが、あまりにもエグすぎる情景におののく。
 そのすぐ近くに、なんと熱湯の沢があった。この沢が、赤湯又沢右俣右沢に入り込むことによって、下流部の水温を上げているのだ。おそらく、この沢の少し上流で、熱湯が激しく湧出しているのだろうが、ちょっと探索する気にはならない。あまりにもリスクが大きすぎる。
 右岸(向かって左側)に移動する。河原の奥の方で、噴気が立ち上る。そこには、ゲロゲロ熱そうな湯沼があった。ここに入れたら最高だろうが、見た感じからして、全身大火傷しそうな雰囲気。何となく、グツグツ煮えたぎっているような気がする。恐る恐る近寄り温度計を差し込むと、あっという間に60℃を超えた。やはり、ここはマズい。(笑)

 ▼デンジャラスな湯沼。ここからの溢れ湯で泥湯を手堀作成。
温泉画像

 例の熱湯の沢が、最も湯量が多いのだが、残念ながら沢と合流する地点でも気持ちよく入湯できそうにない。仕方がないので、手堀作業を開始する。うーん、折畳みスコップを持ってきて良かった。(笑)
 湯舟を掘るだけでなく、沢の流れを変えたりして、湯温を調節する。それにしても地盤が固くて掘りにくい。よって、かなり浅い露天になった。しかも、やっと一人が入湯できるほどの狭さ。(やや悲しい)
 M氏が入湯している間、先ほどの湯沼へ向かう。直接入ることはできないがそこから溢れ出る湯を使えば良いのだ。地面はヌルヌルだったので掘るのは、とても楽だった。童心に帰って、泥遊びに熱中する。ほどなく38℃の素晴らしい泥湯が完成する。至福の寝湯を堪能する。でも、こんな温泉に喜んで入る人間は、あまりいないのだろう。あのM氏でさえ、かなり嫌そうに入湯していたくらいだしね。(笑)

 その後、熱湯沢の手堀露天に入湯し、赤湯又沢右俣右沢の源泉地帯から立ち去る。

 赤湯又沢のベースキャンプに戻る途中、その少し上流にある露天にて入湯する。これといった特徴のない無色透明の単純泉なのだが、疲れた体には、とても優しい。おまけに、けっこう広くて深いので、二人が同時に入っても、ゆったりと体を伸ばすことができる。ぬる湯だったこともあり、予想以上に長湯してしまった。近くの水場で汲んだ新鮮な水を飲みながら、ダラダラと過ごす。

 ▼赤湯又沢にあったもう一つの露天。単純泉だが、よく暖まる良い湯。
温泉画像

 ベースキャンプに戻り、タープを張る。どうやら雨は降らないようなので、ホッと一安心。焚き火の準備をした後、夕食に取りかかる。
 燃料を持ってこなかったが、心配することはない。すぐ近くには小規模ながら地獄があるのだ。沸騰する湯や、立ち上る湯気(有毒ガス?)を使えば、簡単な調理ぐらいできるはずだ。食材と小さい鍋を手にして、地獄の調理場(って凄い日本語だな)へと向かう。

 まずは、アルファ米の赤飯を暖める。これは、パックにジッパーがついているから、赤飯に水を加えた上で、沸騰してる湯溜まりに、放り込めば完了。それに比べると、ラーメン作りは苦労した。
 鍋に水を入れた後、軍手をはめて、慎重に熱湯の湯溜まりに置く。適当な深さを探り当てるのが、けっこう難しい。何度か熱湯に指を突っ込んでしまう。(かなり熱かった)。湯が沸騰した頃を見計らい、ラーメンを投入する。チキンラーメン系なので、すぐに出来上がる。さて、いよいよ調理?も終盤、鍋の引き上げ作業に取りかかる。ところが、これがかなり難しい。バランスを崩してしまい、またもや熱湯に指を突っ込んでしまった上に、ラーメンをこぼしてしまう。(悲)

 けっこうバタバタした後に、ようやく食事にありつく。燃料を持参せずに、しかも自然にダメージを与えることなく、暖かいラーメンと赤飯を食べることができるなんて、何だかとても幸せな気分だ。いわゆる「地獄ラーメン」をガツガツ食べる。(笑)
 M氏は、コンビニ弁当を地獄蒸しして暖めてから食べている。沢で冷やしたビールが、とても美味しそうだ。

 周囲はしだいに暗闇に包まれていくが、残念ながら焚き火は失敗する。(シクシク)。仕方がないのでローソクを灯し、再び青白濁露天に身を沈める。硫黄臭に包まれる中、スピリタスをストレートで飲みながら、二時間以上も極上の湯を満喫する。それにしても、酔いが回る。いやーあ、実に気持ちが良い。

 その夜は、青白濁露天から歩いて10秒ほどの場所で、眠りにつく。ブナの木に張ったブルーシートの下、シェラフにくるまり就寝。
 夜明け前、目が覚めたので、再び温泉に入り、やはり幸せな気分になる。ここには、また来たいと思った。

-2001.10.07-  

→■栩湯(とちゆ)へ続く

【コースタイム】-2001.10.07-
 赤湯又沢野湯1130-赤湯又沢岐れ1203-赤湯又沢右俣右沢出合1233-赤湯又沢右俣右沢野湯1250
 赤湯又沢右俣右沢野湯1400-赤湯又沢野湯1500(泊)

【コースタイム】-2001.10.08-
 赤湯又沢野湯640-赤湯又沢出合757-春川出合1003-大湯の林道入口1135

東北野湯
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