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【野生の旅】富山長野北アルプス野湯探索2 [北アルプスの湯]

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【野生の旅】 ■富山長野 北アルプス野湯探索2 →[北アルプスの湯]

→■北アルプス野湯探索1より続く

= 9月21日:二日目 =

 山小屋は空いていたが、なかなか寝付けなかった。周囲に人がいると気になって眠れない。神経質な性格を恨むが仕方ないことだ。泥酔して前夜19時頃に一度寝入ってしまい、21時頃に目が醒めたものだからさらに始末が悪い。

 ▼富山 夢ノ平竜晶池
温泉画像

 うつらうつらしているうちに、朝4時になる。前夜は雨(及び泥酔)のため、温泉に入れなかったので朝風呂を浴びるために起き上がる。まだ暗い。もちろん他の泊り客は寝ている。降り続く雨音を聞きながら、雨具を着込み高天原温泉へと出発する。
 夜明けを待ちながら、ぼんやりと温泉につかる。考えるのは、これからの予定のことばかり。ここまで雨が降り続くと、さすがにめげてしまう。明日は沢下りをするつもりだったが、とてもそういった雰囲気ではない。コース変更を含め、計画を練り直す必要がありそうだ。
 5時過ぎまで1時間近く入湯してから朝食のために山小屋へ戻る。いちいち雨具を着用するのが鬱陶しい。

 朝食後すぐに山小屋を出発する。山小屋に同宿していた温泉好きのK氏はもしかしたら連泊するかもしれないとのこと。確かにこの天候ならば山歩きをする気にはならない。高天原温泉で一日中ゆっくりと過ごすのもいいかな、と一瞬思ってしまうが、取り合えずは温泉探索をすることにしよう。

 目指す温泉は黒部川支流の湯ノ沢で湧出しているらしい。ただ、通称「湯の壁」と呼ばれるこの温泉は、沢屋さんの本に出てくるぐらいで、ほとんど手がかりがない。前日、高天原山荘のご主人に確認したところ、「湯ノ沢? 途中から藪漕ぎになるし、そんなところに温泉なんか湧いてないよ」という答えが返ってきた。あまり期待せずに気楽な気分で行くことにする。

 朝6時に山小屋を出た後、まずは高天原温泉にザックをデポする。さらに登山道を北へと進むと、ほどなく夢ノ平に到着した。この悪天候の中、当然のことながら全く人気がない。せっかくだから竜晶池へも足をのばす。幻想的な雰囲気がとてもよい。時計を見ると6時30分だ。

 ▼富山 旧高天原新道途中の崩壊した崖
温泉画像

 さてこれからが温泉探索の本番。旧高天原新道がどこまで続いているか分からないが、取り合えず前進あるのみ。雨がぱらつく中、断続的な藪漕ぎを開始する。

 6時46分、踏み跡を辿る途中で崩壊した崖に到達する。地図で現在位置を確認する。どうやら湯ノ沢の近辺に辿り着いたらしい。おそらくこの一帯のどこかに「湯の壁」がある(あった)のだろう。ただこの崖を降りるのが大変そうなので、もう少し先に進むことにした。
 結局ほどよい下降地点が見つからず、崩壊した崖のところまで戻る。無駄に藪漕ぎをしてしまった。時計を見ると7時に近い。もう一度周囲を観察する。ちょっと危険だが何とか降りれそうなポイントを見つけた。
 雨で滑りやすくなった崖を慎重に下り始める。

 少し下りると崖は涸れ沢と変わり歩きやすくなった。途中で「ここを登り返すのか・・・」と後ろを振り返り溜め息をつく。少しだけ後悔。
 下るにしたがってそのうち水が流れ出した。おそらく雨のためだと思うが温泉探索の一つの目印になる。時々温度を確かめながら水の流れを追う。
 次第に藪が近づいてくる。どうやら水流は藪の中を通り、湯ノ沢本流へと合流するらしい。藪漕ぎをしたくないが仕方あるまい。覚悟を決めて前進しようとした時に、右手の藪から合流する水の流れに気がついた。

 あまり期待せずに田植足袋で踏みしめると、暖かいような気がした。軍手を外し、手を差し入れる。やはり暖かい。温度計で測ると20℃あった。
 こうなればがぜん元気が出てくる。暖かい流れを追って上流に向かい藪漕ぎを開始する。

 ▼富山 黒部湯ノ沢 湯の壁
温泉画像

 しかし藪漕ぎは効率的ではない。すぐに疲れてしまったので作戦変更。藪と平行に走っている崖(荒地)を登りながら、源泉湧出ポイントを探ることにする。荒地を少し登り、水の音を頼りに藪漕ぎをして、暖かい流れの温度を確認し、また荒地に戻る。その繰り返し。次第に温度が上昇してくる。
 7時30分、湯の壁の源泉湧出地点に到達した。雨のためか勢いよく湯が湧出している。田植足袋を履いたまま足湯を楽しむ。いやーあ、それにしてもよく見つけられたものだ。(ピース)

 すぐ近くは今にも崩れそうな崖なのだが、源泉湧出地は完全に藪の中である。「湯の壁」と呼ぶのが相応しいかどうか分からないがよしとする。ここは高天原温泉から45分前後かかるので、もしかしたら日本で最も遠い温泉の一つかもしれない。でも32℃しかないし、辿り着くにはリスクも大きいし、藪の中だから湯船を作ることもできないし、費用対効果を考えると割りに合わない温泉だと思う。
 でも、せっかくここまで来たのだし、この先二度と来ないかもしれないので、少しだけ掘った後に布バケツで半身浴をする。雨が降り続く中、とても寒い。発見できて嬉しいやら、寒くて悲しいやら、複雑な心境を抱えながら浴び続ける。

 7時45分、体の震えと戦いながら服を素早く着る。本気で寒い。一刻も早くここから脱出して高天原温泉で体を暖めなければならない(相変わらず頭が悪い)。記念撮影した後、崖を登り始める。
 崖上には思ったよりも楽に辿り着けたが、その後がまずかった。来るときに辿った踏み跡がなかなか見つからない。コンパスで方位を確認しながら、必死の藪漕ぎを繰り返す。一度完全に迷ってしまったが、何とか旧高天原新道に合流できた。
 夢ノ平には8時22分に着いた。ここまで来れば高天原温泉はもう少しだ。冷え切った体に気合を入れ直し先を急ぐ。

 8時30分、ようやく高天原温泉に戻る。何はさておき温泉に飛び込む。あー、極楽。温泉探索の後に入る温泉はとても気持ちがいいな(笑)。あっという間に冷え切った体が暖まる。
 天気も悪いし、朝一番で気力体力をかなり使ったので、今日はゆっくり過ごすことにする。温泉沢の上流部でも野湯が湧出しているらしいが、探索を見送ることにした。それよりも今回の山旅のハイライト(になるであろう)明日の温泉探索に備え体力を温存しておいた方がいいに決まっている。

 ▼富山 雷鳥
温泉画像

 9時頃、高天原温泉を出発する。この日は、岩苔乗越や黒部源流、三俣峠を経由して双六小屋を目指す。雨の中、視界も悪いし、あまり気分のよい山歩きではなかったが、途中、雷鳥と遭遇したのが唯一の収穫だった。それにしてもあのような生物がよく絶滅もせずに生き残ったものだ。
 双六小屋には14時過ぎに到着した。夕食までは布団の中で過ごす。山小屋に暖房が入っていたが何せ寒いのだ。

 16時頃、同室の人間が案内された。何気なく挨拶をすると、なんとK氏だった。私とは別のルート(雲の平経由)を辿ってきたとのこと。K氏とは、折立までのバス、高天原山荘に続き、この山旅で三回目の邂逅である。
 K氏は翌日新穂高温泉へ下りるという。私も悪天候が続くようならば、同じ経路を辿ることになる。夕食が終わっても雨は降り続いている。今日は登山道のあちこちが沢と化していたし、台風が接近してることもあり、現段階では翌日の天候について悲観的にならざるをえない。その上、いざ眠りにつこうとしてもなかなか寝付けない。疲れているはずなのだが、やはり山小屋で熟睡するのは私には無理らしい。

 明日の天気にわずかな期待をかけながら目を閉じる。はたして硫黄沢を下降することができるのだろうか・・・

-2003.09.21-  

→■北アルプス野湯探索3へ続く


【コースタイム】

◆9月21日:二日目
[歩7h30].高天原山荘405-415高天原温泉510-525高天原山荘601-627夢ノ平-629竜晶池-646湯ノ沢支流崖上-657湯ノ沢支流を下降-712暖かい流れ-732湯の壁745-751湯ノ沢支流崖上-822夢ノ平-830高天原温泉905-1113岩苔乗越-1159黒部源流の碑-1302三俣峠-1313雷鳥と遭遇-1415双六小屋(泊)

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